もし中学女子卓球部部長が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んだら

卓球は個人戦とはいえ、団体戦では個人戦とは違うチーム力が求められます。

サッカーや野球で求められるチーム力とは違うかもしれませんが、チーム力がなければ団体戦で勝ち上がることはできません。

『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』、いわゆる『もしドラ』を中学女子卓球部部長が読んだら…。

中学1年時は市内大会1回戦負けだった弱小校が、3年生最後の夏の大会では県大会ベスト4となり、その上の大会に出場できてしまったという、とある中学で本当にあったお話です。

卓球とマネジメントはなかなか結びつかないかもしれませんが、楽しく部活動をするためには必要なことではないでしょうか。

目次

優秀な顧問やコーチがいない

弱小チームが県大会ベスト4に入るなんて聞いたら、きっとあなたは

卓球部の顧問の先生が変わって、急成長したんじゃないの?中学の部活って、顧問やコーチ次第で変わるから。顧問が変わって急に強くなったり弱くなったりするのって、よくある話だし。

と思うでしょう。

しかしこの中学には、体育教師ではありましたが卓球は全くのド素人(本職は陸上)顧問と、卓球は知っていてもほとんど部活に顔を出さない副顧問の先生で、外部コーチも当然ながらいませんでした。

劣悪な練習環境

強豪校にはたいてい専用の卓球場があり、卓球台も練習球も豊富にあります。

強豪校は毎日恵まれた環境で、思う存分練習ができます。

しかしこの中学校には、男子卓球部、女子卓球部、剣道部が体育館とは違う建物を共同で使用していました。しかも運動場の砂が入り込み、いつもザラザラして滑ります。

曜日ごとに部活動が振り分けられ、毎日卓球台について練習できていたわけではありません。

しかも、卓球台がたったの8台。そして女子卓球部員は約50名という大所帯でした。

近くの公民館の体育館を借りて練習をすることもありますが、移動に時間がかかりますし、これも毎日借りられるわけではありません。

まさかの部長指名

中学2年のときの夏の大会。3年生の先輩たちは県大会どころか、市内大会の決勝トーナメントに進むこともなく予選リーグで敗退し,引退していきました。

そして代が変わり、最初に行われるのは新しい部長の選出です。

顧問

次の部長は、夏休みに2年生全員一日部長をしてもらって、その様子をみて部長と副部長を決める!

この代は小学校時代を含めて生徒会経験者や学級委員、その他委員会経験者が多く、誰がなるのか激しい部長争いが起こっていました。

しかし選ばれたのは、そのような役職経験のまったくなかったA子。このメンツでそもそも部長なんて選ばれるわけがないと思っていたので、まさに晴天の霹靂。

そして副部長には、生徒会や学級委員を何度もやっている親友のB子。

部長職を狙っていた他の子から、いろいろと言われていたらしいです。激しい部長争いが起こっていたぐらいなので、派閥争いというか、当時部内はバラバラでした。

みんなの気もちがバラバラな部活でも、部長指名されたからにはみんなを引っ張って、部活動を運営していかなければなりません。

『もしドラ』との出会い

  • 部長になったからには、このバラバラの部活動の現状をなんとかしたい
  • 強くなりたい。できればみんなと頑張って、みんなで強くなりたい
  • 強くなりたいという子もいれば、強くならなくても3年間部活動を楽しめればいいという子もいる

部長になったのは良いけれど,一体どうしたら良いのだろうか…。

そんな、もやもやした悩みを抱えていたので、夏休みの感想文ネタも兼ねて『もしドラ』を薦めてみました。

そして読書感想文は

読書感想文というよりは、部長としての抱負を語った所信表明文

となっていました。たぶんですが、国語の先生には読書感想文としては全く評価されていなかったと思います。

この感想文に書いてあることが全部実行できたら…、本当に強くなりそうな気がしました。

実際に実行できるかできないかに関わらず、こうやって紙に書いて自分の考えをまとめてみることは良いことです。

マネジメント

顧客?部活動に求められているもの?

ドラッガーの『マネジメント』は顧客の定義を求めます。

卓球部の顧客とは一体誰なのか、この場合の答えは小説にそのまま書いてあるのが答えと考えて良いでしょう。

卓球部の顧客は先生、保護者、そして部員たち。その顧客に感動?を与えるのが卓球部?

レギュラーメンバーは試合に出て勝つことが求められているし、そもそも試合に出て勝ちたい気持ちがあるからこそ強くなっています。ただ、我が強い子が多いから何かと衝突しやすいという問題があります。

下位の部員は試合に出れなくても、とにかく3年間楽しく部活ができればいいと考えている子たちです。でも試合に出たときはやっぱり勝ちたいと思うだろうし、できれば引退までに試合に勝つ喜びを知って欲しいです。

上位の部員と下位の部員たちの間には部活に求めているものに温度差があります。

これをどうまとめていけば良いのか?共通するものは何か?ひたすら考えを巡らせます。

人の強みを活かすこと

お前は中間管理職かーーっ!

というぐらいに、会社組織管理職が読むようなビジネス書を中学生が読み漁っていました。ある意味部長も中間管理職と言えるかもしれませんね…。

問題解決について書かれたビジネス書や、リーダーの役割について書かれたビジネス書、自己啓発書

部内の争いごとは問題点を見つけ出し、WinWinで解決できないか考えているようです。

小学生の時から卓球を習っている娘とC子(エース)だけでは団体戦には勝てません。相手のエースにあたって負けることだってあります。実際によく負けてます。

団体戦はとにかく3本勝たなければなりません。

レギュラーかどうかに関わらず、中学から卓球を始めた子たちをいかに底上げしていくかということが、団体戦で勝つための鍵となります。

『もしドラ』で走力がある選手に走力指導させたとあるように、サーブの種類が多くて上手な子にサーブの指南役をさせてみたりしたそうです。

それぞれの得意なもので指南役をお願いしたら、みんな喜んで他の子や後輩たちを指導してくれたのだとか。それはそれで新しい発見でもありました。

そもそもレギュラー陣は、小学生の時から生徒会やら学級委員やらの役職経験者が多かったこともあり、指導者の役割を与える作戦は見事にハマったのかもしれません。部員に恵まれていたとも言えます。

トップマネジメント会談?

夏休みが終わり、二学期になってもまだ部内はバラバラでした。いつも喧嘩ばかり、トラブルばかりが起こっていました。

他の部員たちは部活動が終わると同時に帰宅していましたが、娘とB子だけはいつも帰宅が遅く、他の子が6時には学校を出るのに、2人は7時過ぎになることすらありました。

専門家と協調関係をうまく築いていくことは、『もしドラ』に書いてあります。

顧問の先生は、卓球は素人ですが体育が専門の新人教師です。卓球のことは知らなくても体育が専門なら、良いトレーニング方法とか考えてくれるんじゃないかと期待していました。

実際に、顧問の先生が考えてくれた卓球用の筋トレメニューはきつかったけれど、ひじょうにいい内容だったと、卒業した今ならよく分かると言っています。

気がつけば、先生の強みまで活かしていました。

部長と副部長は部員たちの意見を聞き、練習メニューを顧問の先生と部長と副部長の話し合いで決めていました。先生が勝手に決めるということはありません。

強豪校によくあるような、顧問の先生やコーチが決めたメニューを問答無用で押し付けるということは決してありませんでした。

担任の先生の言葉

いろいろと部内に問題を抱えながらも、新人戦の試合になると一致団結して難なく県大会に出場できてしまっていました。

1年生大会では初戦敗退だったチームなのに、すでにかなりの成長を遂げていました。

それでも

部内がバラバラで、いつも割れていて…。もうヤダッ!!

おまえなあ、思春期真っ只中の女子中学生が30人もいたら、問題の1つや2つあるのは当たり前だぞ。問題がないほうが逆におかしいって。試合の時は一致団結して勝ちに行くんだろ?そこさえブレなければ大丈夫だって。普段は問題があるのが当たり前と思っとけ。そう思って事にあたったほうが精神的に楽だぞ。

担任の先生にそう言われて、肩の力が抜けたようです。

担任の指摘どおり、普段はトラブルばかりでバラバラな部員たちだけど、大会になると普段のバラバラぶりが嘘のように一致団結して貪欲に勝利をもぎ取ろうとしていることは確かです。

担任からそう言われて以来、以前ほど深く思い悩むことはなくなりました。相変わらず部内はバラバラではあったけれども、大きな衝突は段々と少なくなっていったようです。

そして最後の夏の大会

3年生になり、新1年生を迎えて部員は総勢50名となりました。

卓球台が8台しかないという環境で、その50名をなんとか捌き、下級生たちを指導しつつ3年生は最後の夏の大会に向けて練習に励みます。

サーブやレシーブを教え合ったり、下級生を指導したり、部全体のレベルを上げるために部員それぞれが自分の役割を理解し、行動していました。

団体戦のオーダーは、2年生の頃は先生が決めることが多かったのですが、子どもたちが考えたオーダーの方が当たりのことが多いことに気づき、3年生になるとオーダー決めもメンバー同士話し合って決めるようになっていました。

バラバラなんて言っているけど、試合になると団結しています。衝突ばかりだったけど、実は言いたいことを言い合えるいいチームだったのではないでしょうか。

県大会へ

新人戦で県大会出場は果たしていたので、最後の夏の大会の目標はさらにその上の大会になっていました。ベスト4に入れば上に行けます。

初戦からいきなりピンチを迎えてしまいましたが、持ち前のメンタルの強さでクリアし、ベスト8へ。

ゲームが終わると味方ベンチでアドバイスを受けるのですが、先生ではなく子どもたち同士でアドバイスをしあっている姿がそこにはありました。

チームメイトの試合を応援するだけでなく、アドバイスをしあえる関係を築けていました。他の学校では顧問の先生や外部コーチからアドバイスを受けているのとは違う、ひじょうに対照的な光景です。

ベスト4決定戦の相手は、因縁のライバルのD中。1年生大会では為す術もなくあっけなく敗れましたが、新人戦では接戦を制して初の県ベスト4入り。そして今回も気合を入れて望んでみたら、思いの外あっさりと勝ってしまいました。

新人戦のときよりもさらに強くなっていました。

準決勝まで勝ち残った学校は、我が校を除いてレギュラー陣はすべて小学生の時から卓球を習っているメンバーで固めています。我が校は、小学生の頃から卓球をやっている子は2名しかいません。

準決勝は全国常連の私立強豪校。どうあがいても勝てるわけがなく、さすがにあっさりと負けました。一矢(1ゲーム)ぐらい報いたかったです。

3位決定戦の相手は、全員が小学生の頃から卓球をやっているメンバー。一度も買ったことがありません。以前よりかなり差が縮まって競るようにはなりましたが、どうしてもあと一歩が勝てません。

ダブルスがフルゲームで負け、残念ながら団体戦としては2-3で負けてしまいました。

この時の様子を校長が見に来ていました。

いやぁ、良いものを見せてくれました。卓球の試合を観るのは初めてなんですけど、感動しました

『もしドラ』には、顧客に感動という価値を提供するのが野球部とあり、卓球の試合で感動なんて与えられるのかな?なんて思っていたのでビックリです。

校長先生に感動を与えることに成功してしまいました。

地域ブロック大会へ

多分ここまで勝ち上がってこれたのは、創部以来初のこと。

全国までいったら、奇跡。まぁ、流石に無理でしょう。ここまでこれたことすら奇跡に近いのです。

さすがに強豪校ばかりで予選リーグで敗退してしまいました。0-3、1-3、2-3で1つも勝てずに終わってしまいました。

A子の担任の先生が応援に来ていました。

最後惜しかったね。本当に惜しかった。勝ちたかったけどね~。でも、最後まで諦めずによく頑張った。こっちも応援にすごい力が入ったしね。

5番手娘の試合がフルゲームで負けて、本当に最後の試合が終わったときの様子を、バッチリ担任の先生が見ていました。

感動と感謝の言葉

『もしドラ』の最後の方に、部員たちがマネージャーに感謝する場面があります。

同じことが起こりました。

3年生最後の夏が終わり、ここまで頑張ってこれたことをお互いに感謝し、労いました。

副顧問

卓球部の顧問をすること三十ン年。県大会出場は何度か経験がありますが、ここまでこれたのは初めてです。私は今年で定年になります。教師生活、最後の最後の年にこんなに素晴らしい思い出をあの子たちはつくってくれました。保護者の皆様も子どもたちへのサポート、本当にありがとうございました。あの子たちは最後まで本当によく頑張ってくれました

副顧問の先生は、大会記念Tシャツをニコニコしながら買っていました。もちろん、部員たちも買っていました。

A子が部長だったからここまでこれたんだよ

うちの子はさあ、飽きっぽいし、どうせレギュラーになれないっていうのはわかってたんだけどさ。続けられるかどうかも不安だったけど、A子ちゃんがいろいろ気にかけて良くしてくれたから、3年間頑張って続けることができたんだよ。今までありがとね。

うちの子は本当にA子先輩が大好きでね。いつもA子先輩のことを話すんですよ。先輩みたいになりたいって、頑張っているんですよ

最後に、応援に来ていた後輩たちや保護者たちに向かって3年生全員で挨拶をしました。いつもより大きく、清々しい声が、体育館のロビーに響き渡りました。

役割が人を成長させる

娘は「部長として何もやっていない」と言っていましたが、やっていたことは本に書かれていたことに近いことをやっているように見えました。

知らず知らずのうちに本の内容を自分なりに解釈し、最後は意識しないでもできるレベルに昇華していたのではないかと思います。

保護者や顧問の先生の話を聞く限り、部員たちの要望を聞き、一緒に考え、ときに交渉し、実行していたようです。

部長になりたての頃は大いに悩み、人に相談し、話を聞き、本を読み、それでもなかなか思うように解決しないことに苦しんでいました。

ほとんど仲裁役みたいだったと本人は言いますが、ある技術が上手い子にその技術を他の子に教える役割を与えるなどして、なんとかチームが団結し、回っていくように努力していたように思います。

そういう橋渡しも、マネジメントです。

部長となった娘だけではなく、部員全員の成長を感じた1年でした

成長できたのは、部長という役割に真摯に向き合った結果ではないのでしょうか。

あの劣悪な練習環境(卓球台が8台しかない。毎日台について練習できるわけではない。卓球場の床は滑るし、砂埃だらけ)で県大会に出れたという事実だけでもすごいことなのに、県ベスト4に入って、さらに上の大会に出れたというのは本当に頭が下がる思いです。

一緒に頑張ってきた部員のみな様と、活動を支えてくれた保護者の方々に、心から感謝いたします。

指導生徒にオススメする本です

たまに『もしドラ』マネージャーや『もしドラ』部長がニュースになっています。

ドラッガーの『マネジメント』は難しい本ですが、『もしドラ』はそれをわかりやすく噛み砕いて小説形式で表現した本ですので、中学生や高校生でも読み解ける内容となっています。

部活動も一つの組織体です。

『マネジメント』には組織運営に必要なことが書かれています。

部活動という組織をどうやってマネジメントするか、『もしドラ』にはそのヒントやアイデアが中高生にもわかる言葉で書かれています。

『もしドラ』を実践した子どもたちは、決して特別な生徒ではありません。

部活動をより楽しくしたい、より強くしたいと考えた指導生徒がこの本に出会い、自分なりに解釈し、悩み、苦しみ、周りを巻き込んで実践していったにすぎません。

野球やサッカーといった団体競技にマネジメントを当てはめがちですが、個人スポーツである卓球でもマネジメントは重要です。

『もしドラ』なんて架空の小説ではありません。

実話にするのはあなたです!

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